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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第26主日


《A年》
 137 すべての人の救いを
【解説】
 詩編25は詩編34と同じく、ヘブライ語のアルファベットの第6文字(ワウ)が省略されたアルファベット詩編です。た
だし、現代の底本では、他に、第2文字(ベート)と第19文字(コーフ)も欠けています。「道」ということばが何度も繰
り返され、神の道を歩み続けることができるようにと、罪の許しを求める祈りがささげられます。
 答唱句はアルトとバスが第2小節までC(ド)、和音も主和音を保つことで、すべての人の救いを願う精神の持続を
表現しています。後半は一転して、和音も動き、特に「(待)ち望む」で、旋律は最高音のC(ド)に至り、テノールでは
As(ラ♭)が経過的に、アルトではD(レ)⇒E(ミ)という動きが用いられ、救いを待ち望むこころと決意が神に向かって
高められます。
 詩編唱は、六の和音から始まり、救いを待ち望む姿勢が継続されます。第3~第4小節にかけては、伴奏のテノー
ルでFis(ファ♯)を用いて和音が属和音に至り、和音進行でも祈りでも、答唱句へと続くようになっています。

【祈りの注意】
 答唱句はあまり早くならないように注意しましょう。答唱句のこの、ことばをゆっくりと噛み締めるように祈りたいもの
です。人間、誰でも一人や二人は好きになれない人がいることでしょう。その人たちのことをぜひ思い起こし、その人
たちの救いを願い、この答唱を祈りたいものです。「すべてのひとの」と「救いをねがい」の後の八分休符の前の「の」
「い」は、そっとつけるように歌い、やや dim. すると、ことばが生きて、祈りも深まります。
 後半の冒頭の、「わたしはあなたを」は、だんだん cresc. しながら、やや、accel. し、待ち望む、あるいは、待ち
きれない、といった、心から神を切望する気持ちを表します。その後からは、だんだん rit. しますが、決して、乱暴に
怒鳴らないようにしましょう。 P の中での cresc. と考えたほうがよいかもしれません。「待ち望む」で、この
cresc. は最高点に達しますが、「望む」からは、徐々に、 dim. すると祈りも深まるのではないでしょうか。解説にも
あげた、テノールで経過的に用いられるAs(ラ♭)すなわちA(ラ)⇒As(ラ♭)⇒G(ソ)、アルトのD(レ)⇒E(ミ)という
それぞれの動きを「待ち望む」こころをあらわすのにふさわしくしたいものです。、答唱句全体が P で歌われますか
ら、この cresc. も P の中 で cresc. すると、自然と祈りが深まるでしょう。
 詩編は、「答唱詩編」のトップページで注意した原則を思い起こしてください。詩編唱の1節で「神よ」という呼びかけ
がありますが、ここで、区切りを入れると、音楽ばかりか祈りも途切れてしまいます。この詩編唱は、どの小節も一息
で祈りましょう。「神よ」や「神は」の後、半角あいているのは読みやすくするため、途中で字間があいているのは楽譜
の制作上の限界であることは、すでに述べています。
 1節の最後の「くださぃ」は、「さ」をのばし「ぃ」をそっとつけるように、天におられる神に呼びかけるようにします。決
して「さいー」と品が悪くならないようにしてください。最後に歌う答唱句は、この答唱詩編の締めくくりとして、テン
ポも少しおとし、 PP で歌うと、より、この答唱句の祈りのことばが深まるでしょう。
 詩編25全体もそうですが、詩編唱でも「道」ということばがたくさん出てきますが、第一朗読で、神は、預言者エゼ
キエルを通して「正しくないのは、おまえたちの道ではないのか」から、イスラエルに回心を呼びかけます。この回心
の呼びかけに応え、「父親の望みどおりにした」(福音朗読)ものは、「必ず生き」、神の国で永遠に「死ぬことはない」
のです。詩編を歌う方も、答唱句を祈るわたしたちも、この確信をこころに刻み、願いを込めて、この答唱詩編を神にさ
さげましょう。
 最後に歌う答唱句は、この答唱詩編の締めくくりとして、テンポも少しおとし、 PP で歌うと、より、この答唱句の祈
りのことばが深まるでしょう。第一朗読の「知恵の書」を思い起こし、神への信頼といつくしみを願って、この答唱詩編
を深めてゆきましょう。
 ところで、「好きでない人の救いを願う」ということは、「好きになれ」ということではありません。その人を一生好きに
なれないかもしれないし、なれなくてもかまわないのです。それは、キリストがおっしゃったように「敵を愛し、憎むもの
に親切にし、悪口を言うものに祝福を祈り、侮辱するもののために祈る」(ルカ6:27-28)ことなのではないかと思
います。なぜなら、そのような人たちも、「神は、すべての人が救われて真理を知るようになることを望んでおられる」
(1テモテ2:4)のですから。
【オルガン】
 何回も書いているように、答唱句全体が P で歌われますから、基本的にはフルート系のストップで8’にするとよい
でしょう。会衆が多いときには、はででない、4’を加え、それでは強すぎるときには、Swell とコッペル(カプラー)する
方法もあります。答唱句のテンポはあまり早くないのですが、会衆が早すぎる場合が多いようです。前奏で、しっかり
とテンポを提示し、会衆が歌い始めてからも、あわてないように抑えることも大切です。前奏では、後半のだんだん
cresc. しながら、やや、accel. するところ、また、だんだん rit. 徐々に、 dim. するところも、きちんと提示しましょ
う。その意味でオルガン奉仕者にとってこの答唱句は、この、祈りのことばどおりの生き方をしているかを問われるも
のといっても過言ではないと思います。

《B年》
 124 主よあなたは永遠のことば
【解説】
 詩編19は、前半と後半ではその性格が全く異なります。前半は、天空、特に太陽の動きを通して、神の栄光をた
たえています(147「天は神の栄光を語り」で歌われる)。それに対して、後半では、教え・さとし(トーラー=律法)を
与えてくださった神に栄光を帰しています。この、後半部分は詩編119(125で歌われる)と似ています。そして、最
後は、その教えを守ることができるようにとの祈りで結ばれています。
 答唱句は、非常に複雑な和音で進んでゆきます。冒頭は、2♭の長音階、B-Dur(変ロ長調)の主和音で始まりま
すが、これは、最初のアルシスだけです。最後は、バスからC(ド)-G(ソ)-Es(ミ♭)-C(ド)の和音で終わること
から、教会旋法の第一旋法に近いと言えるでしょう。前半はバスが音階進行で動き、とりわけ「永遠の」では、バスと
アルトで臨時記号が使われた半音階の進行で、こころを「永遠」に向けさせます。後半では、バスが第三小節でG
(ソ)、第四小節でC(ド)を持続し、旋律は、最高音のC(ド)となり、この信仰告白の体言止のことばを力強く終わら
せます。
 詩編唱は、ドミナント(属音)のGを中心にして動きます。
 なお、この詩編19を歌う124の場合は、詩編唱の1小節目と3小節目の、最後の四分音符と八分休符(オルガン
では付点四分音符)および小節線を省き、1小節目の全音符から2小節目の全音符、3小節目の全音符から4小節
目の全音符へと、それぞれ続けて歌います。1小節目と3小節目にある最後のことばも、すべて、八分音符で歌いま
す。
 詩編の1節を例に挙げると、以下のようになります。太字は、音が変わるところです。

 かみのおしえはかんぜんでたましいをいきかえらせー*|
  そのさとしはかわらずこころにちえをもたらすー*

【祈りの注意】
 答唱句のことばは、《ガリラヤの危機》の後のペトロの信仰告白のことば(ヨハネ6:68)です。最初の「主よ」の後
の八分休符は、次の「あ」のアルシスを生かすものです。「よ」が惰性で伸びないようにし、オルガンの伴奏が一足早
く変わるのを味わえると、「あ」のアルシスがより生きると思います。ペトロの信仰告白「あなたは永遠のいのちのこと
ばを持っておられます」の後には、「あなたこそ神の聖者であると、わたしたちは信じ、また知っています」とありま
す。この、答唱句のことばも、ただ単に「ラビの一人として」「ユダヤの賢者として」ということではなく、神の聖者として
あなたこそ永遠のいのちのことばをもっておられる、という意味合いになるのではないでしょか。
 「あなたは~」のところを、メトロノームで、はかったように歌うと、ことばを棒読みしているように聞こえます。四声の
場合は、アルトは特にレガートをこころがけましょう。一連の八分音符を、やや早めの気持ちで歌うと、「あなたこそ」と
いう確信に迫る祈りになるのではないでしょうか。「ことば」の部分、特に、アルトの動きは、最後の rit. を促すもの
です。オルガン伴奏だけのときも、この音の動きをよく味わい、オルガン奏者は、祈りを込めて弾きたいものです。こ
の答唱句を歌うとき、ペトロと同じように、キリストに従う決意を新たにしたいものです。
 第一朗読の終わりでモーセは「主の民がすべて預言者になればよいと切望しているのだ」(民数記11:29)といっ
ています。新約の民=教会では、洗礼によってキリストに結ばれた者は、その預言職にも結ばれている、つまり、キ
リスト者一人ひとりが預言者であると言われています。ペトロの信仰告白のことばを通して、キリストに従う決意を新
たにし、神のことばを多くの人に伝えるために、さらに豊かに神のことばを味わう恵みを願いたいものです。
【オルガン】
 詩編のことばを豊かに味わい、黙想しますから、できるだけ、深みのある伴奏を心がけましょう。ストップ構成は、基
本的に、フルート系の8’+4’あるいは、Swell の8’をコッペル(カプラー)でおろしてつなげてもよいでしょう。。ペダ
ルの16’は、あまり、強いものは用いないほうがよいと思います。前奏のとき、上の、テンポの注意を同じように、ここ
ろがけてください。音階と半音で動くアルトを、祈りにふさわしくレガートで弾くことも、祈りを支えるために重要です。

《C年》
 19 いのちあるすべてのものは
【解説】
 詩編146は、ここから始まる5つのハレルヤ詩編(146-150)の最初です。この5つの詩編は、冒頭とおしまいに
「ハレルヤ」があることから「ハレルヤ詩編」と呼ばれています。現在も、ユダヤ教の朝の祈りで用いられていますし、
教会の祈りでは、読書課に含まれています。この、詩編146は元来、神殿で唱えられた神への賛美です。「神」が主
語となっている部分の動詞は、すべて分詞「~~するもの」という意味ですが、これは、その動作が現在も継続して
行われていることを表しています。つまり、分詞で表されている「まことを示し」「裁きを行い」「かてを恵み」「解放され
る」「目を開き」「愛される」という神のわざは、現在も神が継続して行われているのです。また《同義的並行法》を用い
ることで、それらの内容が、さらに強調されています。
 答唱句は、冒頭、オルガンが主音Es(ミ♭)だけ、八分音符一拍早く始まります。二小節目の「すべてのもの」では
「地にあるすべてのもの」を象徴するように、旋律の「すべての」でC(ド)、バスの「すべての」でG(ソ)と、それぞれ、
最低音が用いられています。また、アルトの「すべての」では、ナチュラルでH(シ)が歌われ、それが強調されていま
す。なお、二小節目の冒頭は、他の声部では八分休符になっていますが、バスだけは、一拍早く始まり、文章の継
続を表しています。後半では、旋律もバスも、ほぼ、1オクターヴ上昇し、特に、Last では、旋律が最高音Es(ミ♭)ま
で上がり、力強く「神をたたえよ」(原文では「主を賛美せよ」)と呼びかけます。
 詩編唱は、前半、G(ソ)-As(ラ♭)-F(ファ)-G(ソ)と動きが少なくなっていますが、後半の三小節目では、最
後に八分音符で旋律が上昇し、さらに、四小節目で最高音C(ド)にまで、高まり、バスのB(シ♭)との開きも2オクタ
ーヴ+3度に広がり、「神をたたえよ」という呼びかけが力強く歌われます。
【祈りの注意】
 答唱句の前半、一小節目と二小節目、旋律では、八分休符が冒頭にあり、下降→上昇の動きが繰り返されます。
八分休符は、ことばのアルシスを生かすだけではなく、旋律の動きも生かすものです。二回目の八分休符があるとこ
ろも、バスだけ、早く、一拍早く出て文章を継続させています。混声四部でない場合でも、オルガンの伴奏が、それを
表していますから、二小節目の八分休符で文章の継続も、祈りの精神も切れることのないようにしましょう。
 前半の終わり「すべてのものは」の後では、一瞬で息を吸いますが、そのためには、「ものー」でわずかに rit. しま
す。できるだけ分からない程度にしましょう。これは、非常に難しいかもしれませんが、何回も練習することで、だんだ
んとできるようになってきます。後半の、上行音階では、「すべてのもの」に呼びかけますから、力強く cresc. します
が、ここで、気をつけなければならないのが、間延びすることと、rit. の違いです。rit. の場合は、「神を」で元のテン
ポに戻りますが、間延びした場合は、前のテンポのままか、さらに遅いテンポになっています。この違いがはっきり分
かり、元のテンポで始められるかどうかが、ことばにふさわしい、祈りの歌にできるかどうかの分かれ目になります。
 ことばの典礼では、先週に引き続き、二週連続して、同じような主題となっています。福音朗読では「金持ちとラザ
ロ」のたとえが読まれます。この中で、「モーセと預言者」ということばが出てきますが、ルカの福音書では、復活した
イエスがエマオヘの道で、二人の弟子たちに同じ言葉を用いて、ご自分の復活が『聖書』に書かれていることを説か
れます。「モーセと預言者」すなわち「旧約聖書」は、イエスによって完成=正しい解釈=がなされたものですから、
わたしたちもそれを心におさめ、常に、生活の指針・模範とする必要があります。毎週歌われる「答唱詩編」も、「旧約
聖書」の一つですから、答唱句の一つや詩編の一節でも歌って覚えることは、まさに『聖書』を覚えることになるので
す。
【オルガン】
 答唱句のことばからも、明るい、そして、やや力強い伴奏が望まれるかもしれません。しかし、それは、派手、華
美、というものではないことは、おわかりになるでしょう。冒頭の、八分休符の部分、オルガンの伴奏だけの部分を、
まず、しっかりと弾き、次の「いのちある」を祈りにふさわしいテンポにしましょう。次の「すべての」も、同様です。後半
の「神をたたえよ」の、上行が遅れないようにすることも大切です。「いのちあーる」「すべてのものーは」「かみーを」の
八分音符二拍が連鉤になって、ことばを延ばすところは、きちんと八分音符の粒をそろえるようにしましょう。
 詩編唱も第三小節で、同じ、音型が出てきますから、ここも注意点です。その他の小節も、音が変わるところを間違
わないように、練習の段階で、何回も、歌いながら確認しましょう。
 いつも、言っていることですが、間違わないことが大切なのではありません。詩編の先唱者と、息を合わせ、先唱者
の声と、オルガンの伴奏が一つになることで、祈りが一つとなり、深まってゆくために練習を積み重ねるのです。





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